マーケットってどんな場所?『芥子屋四郎』
本日はお時間をいただきありがとうございます!芥子屋四郎さんにお話を伺えるのをとても楽しみにしておりました。
隆行さん)こちらこそありがとうございます!こうしたインタビューをお受けする機会がほとんどなかったので少し緊張しています(笑)
とても貴重な機会でありがたい限りです。改めてどのような商品を販売されているか教えていただけますか?
隆行さん)芥子屋四郎は、マスタードや粉からしをはじめとする香辛料を、原料栽培から製品加工まで使い方に応じて色々な形でお届けしています!からしの原料の調達やマスタードの種子の粉砕製造は世界最大規模の産地であるカナダの工場で。練からしやNaked Mustardの様な粒マスタードなどの商品の製造・加工については、下妻市にある国内の工場で行なっています。
納豆パックに入っているからしの小袋など、皆さんの生活にも馴染みのあるところへもお届けしているので、実はすでに口にされている方も多いかもしれません。
これまでは直接お客さんに販売はされていなかったのですね。現在は一般のお客さんにも販売されていますが、どのような想いで始められたのでしょうか?
隆行さん)芥子屋四郎は創業から67周年を迎えたのですが、長年からし・マスタードで商いをさせていただいている我々だからこそ提案できる価値があるのではないか?新しい出会いやご縁を作るには自らが動くべきなのでは?と思い販売を開始しました。
そして何より「直接皆さんのもとへお届けしたい!」と思い、チャレンジしています。
そうした経緯があってマーケットにも出店され始めたのですね。いつ頃から出店をされたのでしょうか?
隆行さん)2018年頃に出会った友人が当時、青山ファーマーズマーケットでワインを提供していたのですが、彼に誘われて遊びに行ったのがきっかけです!
皆さんが「食」というキーワードで繋がりを持ち、出店者もお客さんも近い距離間でファーマーズマーケットを盛り上げていっているのがとても印象的で、僕らもコミュニティの一部になりたいと思い出店を考えるようになりました。
最初は業務用のバッグタイプの商品を持って行き、ワイン販売をしていた友人の横でクラッカーにマスタードを乗せて試食をすすめていました。当時提案していた食べ方は、芥子屋四郎のマスタードにマスカルポーネチーズを組み合わせ、その上にアンチョビやケッパー、ハーブ類を乗せたカナッペのように食べられる一品でした。
タイ料理にヒントを得て思いついたのですが、一口サイズながらインパクトがあって楽しめますし、これまでのマスタードの食べ方とも違うので話題性もあるんじゃないかなと。これがとても好評で、常連のお客さんとのご縁や、近隣のお店に導入してもらうきっかけにもなりました。今でも、当社の試食はこの時のメニューがベースになっております。
その後本格的に出店をしたいと思い、商品パッケージを制作して、小売用の商品としてリニューアルしました。私は入社当初から、いつかこの商品に光を当てたいと思っていたので、考案に10年かけ、やっと今のマスタード瓶のパッケージでお客さんへの販売が実現いたしました。
歌舞伎座朝市にも継続的にご出店いただいてます。何が出店のきっかけだったんでしょうか?
隆行さん)青山ファーマーズマーケットの知人から紹介していただいたことがきっかけです。それまでは一つのマーケットにしか出店していなかったので、他の場所にも興味がありました。芥子屋四郎という名前も歌舞伎座や東銀座の雰囲気に合うかなと。
あとは、東京の東側は盛り上がっているなと感じるからですね。芥子屋四郎の商品を扱ってくれているお店は意識的に回るようにしているのですが、その一つが日本橋の兜町。この街も元々金融街だった場所がここ数年の街づくりのおかげもあって、若い世代が集まる場所に変わったと思います。同じように、歌舞伎座や東銀座も新しい人が集まって、どんどん活性化していくことを期待しています!
マーケットに出店される中で、印象的なエピソードや出来事はありますか?
薫子さん)歌舞伎座朝市に出店していた時に、たまたま通りがかった方が私と妹が通っていた学校のバッジをつけているのを見つけたんです。話しかけてみたら、同窓生だったんですよ!すごく話が盛り上がって、それ以降も商品を買っていただいています。
ただ売る・買うだけの関係ではなくて、お客さんとの距離感がもっと近くて、偶然の出会いがあるのがマーケットならではの良さだと思います。
そんな出会いがあったのですね!お客様に商品についてお伝えする上で、何か工夫されている点はありますか?
薫子さん)からし・マスタードをどのように使えば良いかわからないというお声が多いので、具体的なレシピや使い方をお伝えするようにしています。オーソドックスなところだとソーセージに添えたり、トンカツ・しゅうまい・納豆に使ったりしても美味しいですよね。
他にも、自家製のマヨネーズやだし巻き卵、料理の隠し味に使うのもおすすめです!意外にマスタードの酸味を活かして餃子に添えても美味しいですよ。
色々なレパートリーがあるのですね、早速試してみたいと思います!今後チャレンジしてみたいことはありますか?
隆行さん)音楽を楽しむ場で、ワイン屋さんと一緒にからしを使ったバゲットサンドを販売し、音と食を楽しんでいただく場を作りたいという構想があります。ワインとからしを使ったバゲットサンドを片手に、食べたり飲んだり、踊ったりできたら、今までとはまた違った時間を過ごせそうですし、あの時楽しかったなと思い返す時、記憶の片隅に芥子屋四郎の商品の事も楽しかった記憶の一部として思い出していただけたらと。
後は、子ども達にマーケットの店頭に立ってもらう機会を作りたいと思っています。以前に一度、友人のお子さんにマーケットの販売を手伝ってもらったことがあるんです。彼女は積極的にお客さんに試食のお声がけをしたり、試食を作ってくれたり。ちゃんと仕事をしながら、本当に楽しそうに手伝ってくれたんです。
カリール・ジブランと言う方が書いた『預言者』という本の中に「労働、それは目に見えるようになった愛」と書かれている箇所があるのですが、彼女の姿がまさしく愛を持って労働している。楽しみながら、誇りを持ち、自信に満ち溢れた表情で手伝ってくれたのがとても印象的で、もっとそういう場を作っていきたいなと思わされました。
これからのマーケットで求められることはなんだと思いますか?
隆行さん)自分が普段どのように買い物や食事しているのかなと振り返ってみると、友人の紹介や人の繋がりがきっかけであることがほとんどなのですよね。ですから、マーケットもただ買い物をするだけではなくて、「あの人に会いに行こう」と思ってもらえる関係性が生まれる場になると素敵だと思います。
“買い物”をするだけならばインターネットでなんでも買えてしまうご時世ですから。さらに、そこで好きな音楽を聴きながら、美味しい食べ物や飲み物と一緒に、色々な人と会話を楽しめたら『時間を過ごす場』、『共有をする場』、『発見をする場』にもなりえますよね。
商品についても皆さんが欲しいと思えるものであることは当たり前の話で、その上でこれからの時代に必要なものは何かを考えると、ITの進化によってますます便利になっている世の中だからこそ、もっと人間らしさや、古めかしい表現かもしれませんが、“ご縁”が大事なのではないかなと思います。
最後に、『良いマーケット』とはどのようなものだと思いますか?
『人』ですね。
人との繋がりや関係性が育まれる。昔ながらの駄菓子屋のおじいちゃんおばあちゃんみたいに、お客さんとの距離感が近くて、商品の販売もするけど時には世間話もする。物を買いに来る場所というよりは、「あの人とちょっと喋りに立ち寄ろうかな」と思ってもらえる場所と言いますか。僕らのお店もそんな場所にしていきたいと思ってます。
主に業務用のからしを販売されてきた芥子屋四郎さん。実は知らない内に、皆さんも普段の食事で口にされているかもしれません!
マーケットの場であれば、「からしってそもそもどうやって作っているの?」とか「どんな使い方をすると美味しいのだろう?」みたいな素朴な疑問にも答えていただけるはず!ぜひふらっと駄菓子屋に遊びにいく感覚で訪れてみてください!
プロフィール
芥子屋四郎
昭和31年創業。からし・マスタードを専門に販売。 マスタードや粉わさびをはじめとする香辛料を、原料栽培から製品加工まで使い方に応じて様々な形で届けている。
公式HP
Instagram
マーケットへの出店最新情報はこちら!
歌舞伎座朝市